「これ」
ハーレイの表情を観察しながらブルーは紙を手渡す。
「何ですか?」
ブルーの様子にピンときたハーレイは、不信感全開でそれを受け取った。
「お前の今年の仮装」
「はあ……」
去年は何故か卵。その前は壊れかけのロボットとハロウィンに関係があるのかよく分からない仮装をハーレイは命じられる。
拒否権がないことを身に染みて分かっているハーレイは諦めの境地で渡された紙を見た。
「うっ……」
もしかして卵の方がマシかもしれないとハーレイは思う。
「……これは」
「うん。いいだろう?」
「ハロウィンが笑いをとらねばならぬ場だと、今しっかり理解しました」
「遅いな」
「それは義務とは思いませんでした」
両肩と、そしてショートパンツがカボチャカラーでカボチャ型。
真っ白いタイツに白い靴。
大きなフリルのついたシャツに背中が隠れる長さのマントがひらめいている。
「……ジョミーが似合いそうですね」
「拒否された」
なるほど、とハーレイは呟く。
「ジョミーは次期ソルジャーだ。次に話が回るべきはキャプテンであるお前だ」
「こういう話も回ってくる、ということですか」
「当然だ」
「キャプテンである私が拒否した場合、他の長老たちに話が回ることになりますか」
「そうだな」
「では――」
「却下」
「…………」
「お前が着ることに意味がある」
「どんな意味が……?」
「意外性」
「ゼルの方が意外性がありそうですが?」
「こういう奇天烈な服、あいつは逆に喜ぶから面白くない」
「…………」
それがブルーの基準だと知っていても、言われる度にため息が漏れる。
面白いと感じる事が他の者にとって迷惑に繋がるからだ。
「ソルジャー」
「お前のことだからサイズは去年と変わっていないな?」
「……はい」
今年もまた盛大に諦めなければならないのだとハーレイは思った。
「ああ、言い忘れた。これ、王子の正装らしい」
「……王子?」
「絵本にあったんだ。色合いをカボチャカラーに変えてあるけど。今年は特に子供たちに大人気だと思うよ、ハーレイ」
「……心しておきます」
「そうだ。ゼルとヒルマンは従者にしよう。いや国王と側近とか? 王妃と王女もいるといいな。うん。そうしよう」
被害者が増えるのは必死だが、長老全員でとなれば諦めの境地に至るのは早いだろう。
「ソルジャー」
「なんだい?」
「それでソルジャーはどんな仮装を?」
「ヒミツだ」
ブルーの微笑にハーレイは身震いした。
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